守ろう子どもたち:学童保育は今/3 安心できる施設ほしい /埼玉より守ろう子どもたち:学童保育は今/3 安心できる施設ほしい /埼玉
◇暑さに苦しむ障害児
川越市の障害児学童保育所「こっこクラブ」を7月上旬に訪れると、室内の温度計が35度を差していた。外の方が明らかに涼しい。知的障害を持つ子供が顔を火照らせ、じっとりしたじゅうたんに転がって遊ぶ。
「ちょっと待って、汗ふくから」。指導員が噴き出す汗をタオルでぬぐった。132・5平方メートル(約80畳)の部屋に取り付けられた10畳用のエアコンの周りだけが、わずかに冷たかった。
この学童保育所は、市立霞ケ関南小の敷地に建つ築20年のプレハブだ。川越養護学校小学部から高等部の16人が通う。市から無償貸与された施設だが、老朽化がひどい。
「夏は40度近くになって蒸し風呂状態。冬は室内でコートが手放せない。障害児は体温調節が苦手。発作を起こして倒れた子もいる」と保護者会代表の徳山たま子さん(54)。指導員によると、障害児は暑くても言葉で表現できず、頭を壁にぶつけて自傷する子もいる。
県は重度障害児1人当たり月額4万7000円を補助する。しかし、一般の学童保育より指導員を手厚く配置する必要から人件費がかさみ、補修や空調設備に資金を回せないのが実情だ。さいたま市中央区の「風の子クラブ」の鈴木恵子施設長(54)は「子供が隣の建物の壁を壊したり、通りすがりの車に石を投げてしまうことがある。その補償にもお金がかかり、施設の補修まで手が回らない」とため息をつく。
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「風の子」のように施設を自治体から無償で借りているのは県内29カ所中3カ所だけ。ほとんどが自力で施設を確保しており、台所事情はさらに厳しい。
「せめて場所だけでも提供して」との保護者の要望に応え、県教育局は4月、特別支援学校の空き教室などを障害児学童保育所として利用できるよう要綱を定めた。
これを受け、初めて上尾市の「バナナキッズ」が来春新設される「県立上尾かしの木特別支援学校」に入る。
バナナキッズは現在、保護者会が借りる古い木造平屋建ての建物2棟(延べ70平方メートル)に、子供と指導員計33人が身を寄せ合う。保護者会の安藤智子代表(42)は「雨が降ると隣接する幅10メートルの川が増水してよく床下浸水し、2年前は床上まで水がきた。学校内に学童ができれば安心して子供を預けられる」と喜ぶ。
しかし、他の特別支援学校には空き教室がない。県学童保育連絡協議会の森川鉄雄事務局次長(50)は「校庭にプレハブを建ててもらうことも模索したい。教育局には、障害児にとっての学童保育所は社会性や積極性を養う意味もあることをもっと分かってほしい」と話す。
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■ことば
◇障害児学童保育所
障害児の保護者が自主的に始めた集団保育。県内では84年に初めて、本庄養護学校の子供らの「大きな樹」が設立された。仲間と遊ぶことで社会性をはぐくみ、介助する保護者の休息や就労を支援する役割がある。4月現在、県内29カ所の学童保育所はすべて民営。小1~高3の約490人が通う。
保護者が働いていなくても入所できるため、厚生労働省は共働き家庭を支援する一般の学童保育所と違い、法的な位置づけをしていない。保育環境の基準を定めるガイドラインもない。
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