スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
君たちの声を光に:全盲教師の1年
君たちの声を光に:全盲教師の1年/4 川越めぐり /埼玉

 ◇温かいに包まれて--生徒の自然な優しさに喜び
 「今日の目標ですか? 私も含めて、トラブルなく過ごすことですね。私が参加して安全なのか、みんな見ているから」

 6月6日。長瀞町立長瀞中の1年生は、入学後初めての校外学習に出かけた。電車を乗り継いで川越市に行き、班に分かれて施設を見学する「川越めぐり」。全盲の新井淑則(よしのり)先生(46)も1年の副担任として生徒たちを引率する。

 午前7時半過ぎ、生徒たちがそれぞれの自宅に近い秩父鉄道の駅から次々と電車に乗り込んできた。早くもはしゃぎ始める生徒たち。その輪の中に盲導犬のマーリンがいた。

 午前9時10分、東武東上線川越市駅に到着。前日に降った雨もやんで、雲一つない快晴だ。改札を通過した生徒たちは班に分かれ、事前に決めた見学場所に向かう。視力を失った後、4年間勤めた県立盲学校でも校外学習はあり、引率もした。だが、移動は徒歩ではなくすべてバスだった。

 「初めての体験。どうなりますやら」。赤信号の前で、私にこう打ち明けた新井先生に向かって、前を歩いていた男子生徒が叫んだ。「先生、青ですよ!」

 新井先生は「蔵造り資料館」の一角に腰を下ろしてスタンバイ。全班がトラブルなく予定のコースを通っているかを確認するのが仕事だ。次々と訪れる生徒たちが、新井先生にをかける。「団子屋で時間かかっちゃった」「菓子屋横丁に行ってきたよ」

 昼時に資料館にやってきたA組の5人と、昼食に出かけることになった。風間詩織さん(12)が新井先生に手を差し出した。「行ったことがない所を歩くのは怖いって、先生、前に言ってたから」。入ったのはそば屋。とろろそばが運ばれてくると、生徒たちが教えてくれた。「先生、わさびとネギはお盆の左にありますよ」

 食べ終わるころには、店は教え子たちで満席になり、生徒のでにぎやかだ。「給食はいつも、職員室で寂しく食べてますからね。やっぱり食事はみんなで一緒が楽しいですね」。感想を聞いた私に、新井先生はにっこり笑って答えた。

 午後2時。集合時間まで時間があるので「菓子屋横丁」に向かった。人気のスポットだから、他校の中学生も大勢いた。新井先生がサツマイモソフトクリームを食べていると、他校の男子生徒がマーリンをなでた。「触っちゃだめなんだよ」。マーリンの気を散らさないよう、近くにいたB組の村田凱哉(ときや)君(12)が注意した。

 午後3時半、帰りの電車に乗り込んだ。生徒からの質問が飛んできた。「マーリン、シャンプーはどれくらいするの?」「おしっこはどこでもしちゃうんですか?」

 見えていた約20年前、松島(宮城県)や五色沼(福島県)への修学旅行を引率した。学校とは違った解放感に包まれた生徒たちは、とても楽しそうにはしゃいでいた。「時を経ても一緒だな」。弾むを聞いて、そう思った。授業では、発言が多い男子生徒と話しがちだが、今日は女子生徒も声をかけてきた。自然と他者に優しくできる生徒たちの姿を感じ、うれしかった。

 緑が一段と鮮やかになった長瀞に戻ってきた。野上駅から学校への道のり、「何事もなく戻ってきたなあ」とほっとした。午後5時を告げるいつもの「夕焼小焼」の鐘が聞こえてきた。

君たちの声を光に:全盲教師の1年/4 川越めぐり /埼玉より
スポンサーサイト
テーマ:ニュース
ジャンル:ニュース
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。